神経を抜いた歯の色が気になる方へ。変色した歯を白くする方法
監修:歯科医師 安藤壮吾
他の歯と比べて、ある歯の色が違うと感じたことはありませんか? 以前に神経を取る治療を行なった歯は変色しやすくなります。もし前歯であればさらにその変化が気になり、白い歯を取り戻したいと思われる方もいらっしゃるでしょう。今回は、歯が変色してしまった際にどのようにして白くするかをお伝えします。
どうして神経を抜いた歯は変色するのか
神経を抜く処置をした歯は、時間の経過と共に見た目に影響が現れます。
通常、歯の根管内には血液が流れ、酸素や栄養を歯に送り届けています。しかし、神経を除去することでこれらの血管も取り除かれるため、血液の循環ができなくなってしまうのです。
その結果、象牙質内のコラーゲンが徐々に劣化して内部から変色を始め、その色がエナメル質を透過することで歯全体が変色したように見えます。
神経を抜いた歯の変色を改善する方法
神経を取った後の歯の変色は、人目につきやすく、笑顔を控えがちになることもあります。
色の改善といえばホワイトニングが一般的ですが、この場合は内部からの変色のため、表面のホワイトニングでは効果が期待できません。
では、どうすればこのような変色を改善できるのでしょうか。
ウォーキングブリーチ
「ウォーキングブリーチ」という言葉を耳にしたことはありますか?
ウォーキングブリーチは、神経を取り除いた歯のような内部からの変色を漂白する方法です。一般的なホワイトニングと異なり、歯の内部にホワイトニング剤を注入して色素を分解し、少しずつ歯を白くしていきます。効果は瞬時には現れず、数日間かけて徐々に白くなりますが、永久的なものではありません。時間が経過すると元の変色に戻る可能性があるため、必要に応じて繰り返し治療を行うことが推奨されます。
この方法の大きなメリットは、歯を削ることなく元の形を保ちながら白くできる点です。
なお、治療は週に1回程度の通院を2〜3回繰り返すことが一般的です。また、保険適用外のため、費用は5,000円から20,000円程度かかりますが、これは歯科医院によって異なるため、事前に歯科医師に確認することをお勧めします。
セラミック
セラミックの被せ物は、ウォーキングブリーチで対応が難しい場合や、歯が大きく欠けている場合に適しています。
この方法では、ご自身の歯を大きく削り、その上にセラミックの被せ物を装着します。セラミックは自然な見た目と光沢を再現することができ、長期にわたって変色の心配が少ないというメリットがあります。
ただし、デメリットも存在します。
まず、元の歯を大幅に削らなければいけません。また、セラミックの被せ物は保険適用外であり、費用は80,000円から120,000円程度と高額になることが一般的です。保険診療でプラスチックの被せ物を行なうこともできますが、変色しやすく、プラークの付着が原因で虫歯や歯周病のリスクが高まる可能性があるためお勧めできません。
セラミックの被せ物を選択する際には、歯科医師とカウンセリングをした上で、納得のいく治療を行うことが重要です。歯科医院によって料金が異なるため、事前に確認するようにしましょう。
「ウォーキングブリーチ」も「セラミック」も、見た目だけでなく歯の強度も考慮して選ぶことが大切です。
特に、神経を取った歯は他の歯に比べて脆いため、ウォーキングブリーチ後は補強が必要になることがあります。これらの治療法は、歯の美しさと機能を同時に改善する必要があります。
神経を抜いていなくても、歯は変色することがある
歯が変色する原因は、神経を取った治療や虫歯だけではありません。
実は、歯に強い衝撃が加わったり、矯正治療による強い力が加わったりすることで、歯の神経が死んでしまい、血液の循環が阻害されて変色が起こることがあります。衝撃を受けた直後には変色が見られないことが多く、数年後に突然変色が現れるケースもあります。
このように変色した歯は、死んでしまった神経を除去する治療が必要です。変色が進んだ歯は痛みを伴わないことが多いため、見た目の変化に気づいた際は、速やかに歯科医院での診断を受けることが推奨されます。
変色が気になったら、まずは歯科医院で相談を
歯の変色の主な原因は、象牙質内のコラーゲンが徐々に劣化することです。前歯など目立つ位置の歯が変色していると特に気になってしまうでしょう。
歯の変色の程度や原因によって適切な治療方法は異なりますので、もし歯の色に気になる点があれば、まずは歯科医院で診断を受けることをお勧めします。適切な治療によって、美しい白い歯を取り戻すことが可能です。ぜひ一度ご相談ください。