顎関節症は何科を受診すべき?正しい受診先や治療法を解説
監修:歯科医師 安藤壮吾
口を開けると顎が鳴る、食いしばると顎が痛いといった症状に悩んでいませんか?しかし、「もしかしたら顎関節症かも…」と気になっても、最初に何科へ行けばよいかわからずにいる方もいらっしゃるでしょう。
実は、顎関節症は放置すると全身の不調に繋がることもあるデリケートな疾患です。
本記事では、顎関節症が疑われる時の受診先の選び方や、専門的な治療内容、放置するリスクについて、公的な指標に基づきわかりやすく解説します。
顎関節症かも?受診すべき診療科の正解
顎の違和感が気になった時、まず受診すべきなのは「歯科」です。歯科の中でも特に「歯科口腔外科」を掲げている医院を選びましょう。
1. 第一選択は「歯科口腔外科」
顎関節症は、顎の関節やそれを動かす筋肉(咀嚼筋)の障害です。一般的な歯科医院でも対応可能ですが、骨の変形や重度の炎症が疑われる場合、外科的知識の豊富な歯科口腔外科が適しています。
大学病院などの大きな病院はもちろん、「歯科口腔外科」を標榜している医院なら、お口周りの外科的疾患や関節のトラブルに詳しいため、よりスムーズな診断が期待できます。
2. 「一般歯科」でも相談は可能
かかりつけの歯科医院がある場合は、まずはそこで相談しても問題ありません。多くの歯科医院でマウスピース治療(スプリント療法)を実施可能です。もし精密な検査が必要と診断された場合は、大学病院などの専門機関へ紹介状を書いてもらうことができます。
3. 整形外科ではなく「歯科」である理由
「関節の痛みだから整形外科では?」と思う方もいるかもしれません。たしかに、整形外科でも診察は可能です。しかし、顎関節症には噛み合わせ(咬合)や歯を支える周辺組織が深く関わっており、お口の中の調整を行なえるのは歯科医師のみです。そのため、まずは歯科・歯科口腔外科を受診し、必要に応じて他科と連携を行うのが、最もスムーズな治療の流れといえます。
顎関節症の主な症状とセルフチェック
日本顎関節学会の定義によれば、以下の3つの主要症状のうち、少なくとも1つがある場合に顎関節症が疑われます。
- 顎関節雑音: 口を開閉するときに「カクカク」「ミシミシ」と音がする。
- 顎関節痛・咀嚼筋痛: 顎の関節や頬の筋肉が痛む。
- 開口障害: 口が大きく開かない(口を開けた時に、人差し指から薬指までの3本を縦にして入らないのが目安)。
※日本顎関節学会「顎関節症の診断基準」によると、これらに加え、他の疾患(親知らずの炎症や腫瘍など)を除外することで診断が確定します。
<簡単なセルフチェックリスト>
- 朝起きたときに顎の周辺が重だるい
- 硬いものを食べると顎がすぐに疲れる
- 左右で噛み合わせに違和感がある
- 無意識に食いしばっていることがある
- 口を閉めるときに真っ直ぐ閉じられない(左右に歪む)
歯科医院で行われる検査と診断の流れ
顎関節症は、
- ブラキシズム(歯ぎしり・食いしばり):寝ている間の歯ぎしりや、日中の食いしばりによる、顎の関節への過度な負担
- 生活習慣:頬杖をつく、片側だけで噛む、うつ伏せ寝、長時間のスマートフォン操作による姿勢の悪さなど
- 精神的ストレス:ストレスによる筋肉の緊張
- 噛み合わせの異常:歯並びや抜けた歯の放置によって、関節の動きが阻害される
など、複数の要因が積み重なって発症すると考えられおり、適切な治療を行うためには、初めに痛みの原因を特定することが必要です。
○問診と視診
いつから痛むのか、食事の際に支障があるかなど、現在の症状について詳しくお伺いします。また、顔の左右のバランスや、口の開き方の癖を確認します。
○触診
頬やこめかみ周辺の咀嚼筋(咬筋や側頭筋)を指で押し、痛みやしこりがないかを確認します。これにより、痛みの原因が「関節そのもの」か「周りの筋肉」かを判断します。
○レントゲン・CT検査
顎の骨の形態や、関節の隙間に異常がないかを調べます。歯科用CTを導入している医院なら、骨の状態を立体的に把握することも可能です。
○MRI検査(精密検査)
骨ではなく「関節円板(クッション)」の位置のズレや変形を詳しく調べるために行う検査です。主に大学病院などの大きな病院で行われます。
顎関節症の主な治療法
顎関節症の治療では、いきなり大がかりな治療をするのではなく、まずは体への負担が少ない治療からスタートするのが一般的です。
1. スプリント療法(マウスピース)
夜間に専用のマウスピースを装着することで、無意識に行なっている歯ぎしりや食いしばりによる顎関節への負担を軽減します。健康保険が適用される(5,000円~7,000円程度)一般的な治療法です。
2. 薬物療法
痛みが強い場合には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの鎮痛剤が処方されます。また、筋肉の緊張が強い場合には筋弛緩剤が用いられることもあります。
3. 理学療法(リハビリテーション)
マッサージや温熱療法で筋肉をほぐしたり、開口訓練(口を開ける練習)を行なったりします。
ただし、痛みが強い時期に無理に動かすと悪化するため、自己流ではなく必ず歯科医師の指導のもとで行なってください。
4. 生活習慣の改善
顎関節に影響を及ぼす日常生活の悪癖や悪習慣を改善する指導です。
例えば、無意識に上下の歯を接触させている癖(上下歯列接触癖)や頬杖などを、意識して止めるようにするだけで、症状が改善することもあります。
放置するとどうなる?放置のリスクと合併症
「少し音がするだけだから」と放置してしまうと、症状が悪化し、私生活に支障をきたす恐れがあります。
- 慢性的な頭痛・肩こり: 顎の筋肉の緊張が首や肩に波及し、全身の不調につながります。
- 顔の歪み: 片側だけで噛む癖が強まると、顔の筋肉の付き方が左右非対称になることがあります。
- 摂食障害: 痛みのために固いものが食べられなくなり、栄養バランスが偏る原因となります。
今日からできる!顎関節症の予防とセルフケア
治療と並行して、自分自身の生活習慣も見直してみましょう。
◎TCH(歯列接触癖)の改善
通常、安静時には上下の歯は接触していません。もし無意識に触れているなら、意識して離すようにしましょう。
◎姿勢の改善
猫背になると顎が前に突き出され、関節に負担がかかります。背筋を伸ばして、正しい姿勢を心がけましょう。
◎柔らかいものを食べる
痛みがある時期は、硬いせんべいやフランスパンなど歯ごたえのある食べ物は避け、顎を休ませてください。
◎リラックスタイムを作る
入浴中に顎の周りを優しくマッサージしたり、蒸しタオルで温めたりするのも効果的です。
早めの相談が早期改善のカギ
顎関節症は、多くの場合、適切な生活習慣の改善と治療で症状をコントロールできる疾患です。「何科に行けばいいかわからない」と悩んでいる間に、症状が悪化してしまうこともあります。
些細な違和感を身体からのサインと捉え、まずは歯科口腔外科、あるいはかかりつけの歯科医院へ足を運んでみてください。
当院では無料カウンセリングも行なっております。お気軽にご相談ください。