歯周炎は「歯周病」の一歩手前!腫れの原因と対処法について
監修:歯科医師 安藤壮吾
歯磨きやデンタルフロスを使用した際に歯茎から出血することはありませんか?歯茎の色も赤くなっているようなら、もしかしたら「歯肉炎」の兆候かもしれません。放置すればするほど症状は悪化し、最終的には歯を失う恐れもあります。
この記事では、歯肉炎の原因と予防方法について詳しく解説します。
そもそも歯肉炎とは?
「歯肉炎」とは、歯茎に炎症が起きている状態のことです。主な症状は赤みや腫れ、出血などです。炎症部分に歯ブラシが当たるだけでも出血を伴うことがあります。
歯肉炎・歯周炎・歯周病は何が違うの?
歯肉炎の場合、歯茎の炎症はプラークや細菌をしっかり除去することでおさまり、健康な状態に回復することが可能です。
しかし、歯周炎はさらに深刻な状態で、歯茎だけでなく、歯を支える歯槽骨にもダメージを与えています。
プラークや細菌を取り除いても、一度損傷した歯槽骨が元に戻ることはありません。つまり、歯周炎は歯肉炎が進行した、より深刻な段階を表しています。
歯周病は、歯肉炎や歯周炎など、歯茎や周辺組織の病気の総称です。
歯周炎になる原因とは
「歯肉炎」と「歯周炎」は、どちらも歯の表面に付着したプラークや細菌が原因で引き起こされます。
歯ブラシの毛先が届きにくい部分は特に細菌が残りやすく、その細菌が出す毒素が炎症を起こします。この炎症を放置すると、歯周ポケットが形成され、その中に細菌が侵入して増殖することで、さらに症状が悪化します。
なぜ、歯周炎が危険なのか?
歯周炎について、プラークや細菌を取り除けば大丈夫だと思っていませんか?自分ではしっかり磨けていると感じていても、実際には見えない部分にプラークや細菌が残っていることが多いのです。その危険性と、歯周炎がどのように進行するのかをお伝えします。
気づかない間に進行していく
歯周病は「サイレントディジーズ(Silent Disease:静かなる病気)」とも称され、その名の通り、多くの場合、自覚症状がほとんどないまま進行します。そのため、患者様自身が病気の存在に気付かないことが一般的です。
実際に、成人の80%以上が何らかの形で歯周病に影響を受けているとされ、多くの方が初期症状を見逃しています。症状が明らかになる頃には、病気はかなり進行しており、治療が困難になることも少なくありません。進行すると、歯を支える組織が徐々に破壊され、最終的には歯が抜け落ちるリスクが非常に高くなります。
歯周病はやがて全身の健康へ影響することも
歯周病は、お口の中だけの問題ではありません。全身疾患とも関係があると言われています。
〇糖尿病
糖尿病の方は、体の抵抗力が弱まりがちで歯周病に感染しやすく、また、病状が進行する速度も速いと言われています。さらに、歯周病が糖尿病のコントロールを困難にさせることもあります。歯周病菌が体内で炎症反応を引き起こし、これが血糖値の管理を複雑にするため、糖尿病の症状を悪化させる可能性があるのです。
〇脳卒中
歯周病菌が体内で炎症を引き起こすことにより、動脈硬化が進行し、血栓が形成されやすくなる危険性があります。その結果、脳塞栓などの重大な健康問題を引き起こすリスクが、健康な人と比較して最大で3倍にも増加すると言われています。
〇心筋梗塞
歯周病菌が血流に侵入し、全身の血管を通じて様々な臓器に到達することがあります。これらの菌が血管内でプラークを形成し、血液中に拡散すると、血栓が形成されるリスクが高まります。この状態が進行すると、心筋梗塞の原因にもなります。
〇誤嚥性肺炎
年齢が上がるにつれて、口腔機能の低下が見られることがあります。この機能低下が原因で、食べ物が気管や肺に入り込むことがあり、それが誤嚥(ごえん)を引き起こすリスクを高めます。さらに、唾液中にも歯周病菌が存在するため、これらが誤って気管に入り込むと誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があるのです。特に高齢者にとって深刻な健康問題となるため、適切な口腔ケアが非常に重要です。
〇低体重児、早産
低体重児とは、体重が2500グラム未満で生まれる赤ちゃんのことを言います。歯周病菌が出す毒素は、母親の血中濃度を高めることがあります。これにより子宮が収縮し、結果として早産や低体重児での出産のリスクが高まる可能性があるとされているのです。妊娠中の歯周病の管理は、母子の健康を守るためにも非常に重要とされています。
歯周炎・歯茎の腫れの正しい対処法について
歯周病による歯茎の腫れは、通常、歯に付着したプラークが原因です。このプラークを取り除くことが、改善への第一歩となります。
<お口を清潔に保つ>
まずは、ブラッシングをしっかり行うことが重要です。歯ブラシの毛先が届きにくい部分には、デンタルフロスや歯間ブラシを使用すると良いでしょう。歯茎が腫れているときは、些細な刺激でも痛みを感じることがありますので、柔らかめの歯ブラシを使用し、優しく磨くようにしてください。その際、出血することがありますが、炎症が落ち着いてくると出血も減少します。ご自身での丁寧なブラッシングと併せて、定期的に歯科医院を受診しクリーニングを受けることをお勧めします。
歯周炎のチェック・クリーニングはなみき通り歯科へ
歯周炎かどうかをご自身で判断するのは難しいです。そのため、現在の状態を歯科医院にてしっかりと診断してもらう必要があります。ブラッシングの際の出血を放置すると、知らないうちに病状が進行してしまうかもしれません。歯茎の状態に不安がある場合は、早めのチェックやクリーニングをお勧めします。