神経を抜いた歯にも虫歯のリスクがあるって本当？原因からケア方法まで解説
監修：歯科医師 安藤壮吾
「虫歯が悪化して、ついに神経を抜く治療を受けた」――そんな方もいらっしゃるのではないでしょうか。
歯の神経を取る治療（抜髄）は、重度の虫歯などで歯髄が感染してしまった場合に、痛みの除去や感染拡大を防止するために行われる処置です。。
ところで、「神経を取った歯だからもう虫歯にはならない」「痛くないから問題ない」と油断していませんか？
実は神経を抜いた歯も虫歯になります。そして、痛みを感じにくいぶん、発見が遅れて深刻な状態に陥ることもあるのです。
今回は、神経を抜いた歯が再び虫歯になる原因や症状、早期発見のポイント、そして、歯を長持ちさせるためのケア方法についてわかりやすく解説します。
神経を抜いた歯でも虫歯になる！その理由とは？
神経を取ると、歯の内部環境が大きく変わります。そのため、次のような理由から、神経のない歯の方がむしろリスクが高いとも言えるのです。
1. 痛みを感じにくくなる
神経を失った歯は「痛みのセンサー」が失われて歯自体には痛みを感じないため、虫歯が進行しても自覚症状が出にくく、発見が遅れがちになります。
2. 歯がもろくなる
歯の神経（歯髄）は、神経組織と血管などでできた組織で、歯の内部に水分や栄養を運ぶ役割があります。そのため、神経を失うと、歯は乾燥してもろく割れやすくなります。特に歯の根っこの部分が割れると、多くの場合、抜歯せざるを得ない状況になります。
3. 免疫力の低下
神経には細菌の侵入を防ぐ免疫機能もあり、これが失われることで感染リスクが高まります。
4. 詰め物・被せ物の隙間からの再感染
神経を抜いた歯には詰め物や被せ物をつけますが、その境目にごく小さな隙間ができて、そこから虫歯菌が侵入することがあります。しかも痛みを感じないため、気づいたときには重度の虫歯になっていることが多いです。
神経がないのに「痛む」こともある？こんな症状に注意
「神経を取ったはずなのに、痛む・違和感がある」という場合は、歯の周囲組織に異常が生じている可能性があります。
以下のような症状は、放置すると歯の寿命を縮めてしまう原因になるので注意が必要です。
○噛んだときの痛みや違和感
詰め物や被せ物が合っていなかったり、歯の根が割れていたりする可能性があります。
○歯ぐきの腫れ・膿・出血
歯の根の先に膿がたまる「根尖性歯周炎」や、進行した歯周病によって起こることがあります。
○フロスが引っかかる・すぐ切れる
被せ物の下で虫歯が進行して、境目に段差ができていたり、残っているご自身の歯が欠けたりしている可能性があります。
こうした症状がある場合は、早めに歯科医院を受診することが重要です。
トラブルが見つかった場合の治療法
神経を抜いた歯に異常が見つかった場合、原因に応じて以下のような治療を行います。
○感染根管治療（根管治療の再治療）
根の中に残った細菌が再感染して根尖性歯周炎などになっている場合、再度根管内を清掃・消毒する必要があります。
○被せ物の再作製
被せ物が劣化していたり不適合になったりしている場合は、新しいものに交換することで再発リスクを防ぐことができます。
○歯周病治療
歯ぐきの炎症や腫れが歯周病の進行によるものである場合は、プラークや歯石を除去する処置を行います。歯周病が重度に進行している場合は外科的治療が必要になることもあります。
○抜歯
歯の根っこの部分が割れていたり、重度の感染が広がっていたりする場合は、残念ながら抜歯が選択されることもあります。
神経を抜いた歯を長く守るためのケアと予防法
神経を失った歯の寿命は、ケアの有無で大きく変わります。適切な予防を続けることで長持ちさせることができますので確認しておきましょう。
● 定期的な歯科検診を受ける
「神経を取って痛くないから大丈夫」と考えず、神経のない歯こそ、定期的な歯科医院でのチェックとレントゲンによる診断が欠かせません。定期検診を受診するようにしましょう。
● 日々のセルフケアを徹底する
詰め物や被せ物の周囲は、プラークなどの汚れがたまりやすい場所です。歯ブラシだけでなく、フロスや歯間ブラシも活用して磨き残しを防ぎましょう。
● 精密根管治療（保険外診療）を選ぶ
マイクロスコープ（歯科用顕微鏡）等の機器を用いた「精密根管治療」を選ぶことも選択肢のひとつです。保険外診療になりますが、より精密な治療が可能になるため再治療のリスクを大きく減らすことができます。
● 治療を途中でやめない
治療を中断してしまうと、再感染のリスクが大幅に上がります。ご自身の歯と健康を守るためにも、最後までしっかり通院して治療を完了しましょう。
神経を抜いた歯こそ、油断せず定期的なケアを！
神経を抜いた歯は「もう大丈夫」と思われがちですが、実際には虫歯になるリスクがあり、痛みを感じないまま悪化してしまうことも少なくありません。だからこそ丁寧なケアと定期的なチェックが必要です。
しばらく歯科に行っていない、以前に歯の神経を取る治療をしたことがある、という方こそ、この機会にぜひ一度ご相談ください。
「痛くなる前にチェックしておく」という意識が、あなたの歯を守る第一歩になります。