【歯茎からの出血】原因と正しい対処法を徹底解説
監修:歯科医師 安藤壮吾
歯磨きのときに歯茎から血が出る…これは多くの人が一度は経験したことがあるのではないでしょうか?歯茎からの出血は、一時的なものだと思って放置されがちです。しかし、実は健康問題のサインであり、お口や全身に異変が起きているかもしれません。今回は、歯茎から出血する原因と正しい対処法をわかりやすく解説します。
なぜ歯茎から出血するのか?主な原因一覧
歯茎の出血には、次のようなさまざまな要因が関与しています。
○歯周病(歯肉炎・歯周炎)
歯周病は、日本人の成人の8割以上が罹患している、もしくは予備軍であると言われています。プラークや歯石の中の細菌が歯茎の炎症を引き起こし、赤み・腫れ・膿、そして出血などの症状が出てきます。歯周病は自覚症状が少ないため注意が必要です。
○強すぎるブラッシング
歯磨きの力が強すぎたり、硬い歯ブラシを使用したりすると、歯茎を傷つけやすいため出血することがあります。
○歯石の沈着
プラークは、長期間お口の中に留まり続けることで唾液中のミネラルなどと結合して硬化し、歯石になります。特に、歯ブラシでは届かない歯と歯茎の隙間に付着した歯石は、歯茎の炎症の大きな要因であり、放置することで出血しやすくなります。
○服用中の薬の影響
抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)や一部の降圧剤・免疫抑制剤などは、歯茎からの出血を引き起こすことがあります。
○ホルモンバランスの変化(女性)
女性の場合、妊娠・生理・更年期などの時期にホルモンバランスや免疫バランスが変化し、出血しやすくなることがあります。
○ドライマウス
唾液の分泌量が減少し、口内が乾燥しやすい状態のことをドライマウスと言います。唾液の量が減ると、口内の自浄作用が低下して細菌が繁殖しやすくなるため、炎症・出血を招くことがあります。
○歯ぎしりや咬み合わせの悪さ
歯ぎしりをする癖があったり、噛み合わせが良くなかったりする場合、一部の歯に過剰な負荷がかかるため、歯茎にもダメージが加わって炎症・出血を引き起こすことがあります。
○ビタミンの不足
ビタミンC・D・Kが欠乏している場合、歯茎の健康維持に悪影響が及び、出血を招くことがあります。
○全身疾患の可能性
白血病や血友病などの血液の病気、糖尿病などの全身疾患によって、歯茎が出血しやすくなることがあります。
放置するとどうなる?歯茎からの出血がもたらすリスク
歯茎からの出血を放置していると、以下のような深刻なトラブルにつながる可能性があります。
◆歯周病が進行して歯を喪失する
歯茎の出血を伴う歯周病が進行していくと、細菌感染が歯を支える顎の骨(歯槽骨)にまで及びます。その結果、骨が溶け、支えを失った歯はグラついたり抜けたりすることがあります。
◆全身の病気を招くリスクが高まる
歯周病菌やその毒素が血流に乗ることで、心筋梗塞、早産・低体重児出産などのリスクが高まると言われています。
◆炎症の悪循環に陥る
「血が出てるから触らないでおこう」と、歯茎からの出血を気にして歯磨きを軽く済ませていると、プラークが蓄積してさらに炎症が悪化してしまいます。
◆重篤な疾患の見逃し
血液疾患などの初期症状として歯茎から出血していることがあります。このサインを見過すと、治療の遅れに繋がりかねません。
歯茎からの出血を感じたらやるべきこと
1、セルフケアの見直し
出血部位は、普通もしくは柔らかい歯ブラシで優しくブラッシングしましょう。デンタルフロスや歯間ブラシ、低刺激の歯磨き粉や洗口液など、歯ブラシ以外の清掃補助ツールを活用することも効果的です。
2、歯科医院でのクリーニングを受ける
歯石は硬く、歯の表面にこびりついていて、ご自身の歯磨きでは除去できません。特に、歯と歯茎の隙間にできた歯石は、歯科医院で用いられる専用の器具を使わないと取り除けないため、プロによるクリーニングを受けましょう。
3、歯科医院で正確な診断を
出血が始まり、
- 2〜3日経っても治まらない
- 頻繁に出る
- 悪化する
- 痛みや腫れがある
などの場合は、すぐに歯科医院を受診して、原因を特定しましょう。
4、生活習慣の改善
喫煙や飲酒、偏食、運動不足、ストレス、睡眠不足は、歯周病のリスクを高めます。特に喫煙は歯茎への血行を悪くして傷の治りを悪くするので、禁煙できるとベストでしょう。
5、必要に応じて医科を受診する
内科的な病気や服薬が原因のこともあるため、歯科だけで改善しない場合は医科に相談しましょう。歯科から医科への紹介状をご用意できる場合もあります。
出血は体が出している危険信号!放置せずに相談を
歯茎からの出血は、ただの「磨きすぎ」「歯茎を傷つけただけ」ではないかもしれません。歯周病が進行していたり、生活習慣が乱れていたりする場合が多いです。さらに、全身疾患の初期症状であることも考えられます。
「血が出るから磨かないでおこう」は、正しい判断ではありません。
大切なのは、出血している箇所ほど優しく丁寧に磨き、必要に応じて歯科医院で検査・治療を受けることです。放置せず、正しいケアと専門家のサポートによって異常を早期発見・解決し、歯茎と全身の健康を守りましょう。