年齢別に見るフッ素の使用方法について。濃度や種類など徹底解説
監修:歯科医師 安藤壮吾
フッ素は乳歯が生え始める時期から虫歯予防に非常に効果的ですが、その利用にはタイミングが重要です。このコラムでは、小さな子どもの乳歯期から大人の永久歯期まで、各年齢に最適なフッ素濃度と使用方法をわかりやすく解説します。
フッ素の開始は乳歯が生え始めたら
フッ素は虫歯を防ぐ効果があるため、多くの歯磨き粉に含まれています。フッ素の効果により、日々のブラッシングで手軽に歯を強化でき、虫歯のリスクを減らすことができます。
しかし、フッ素をいつから使い始めるべきか疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。実は、フッ素の使用に年齢制限は特にありません。乳歯が生え始めたら、どの年齢からでも歯科医院でフッ素塗布を受けることが可能です。遅くても2~3歳頃にフッ素を使用していただくと良いでしょう。
2~3歳は乳歯の奥歯(乳臼歯)が生える時期です。乳臼歯は他の乳歯より溝が多く、歯と歯の間にも食べ物が詰まりやすいため虫歯のリスクが高いです。そのため、フッ素を使用し歯の質を強化することが、虫歯予防に繋がります。
また、歯は未熟な状態で生え始め、時間の経過とともに成熟してきます。フッ素は特に、歯が未熟な状態から成熟していく間に取り込まれやすいです。そのため、乳歯が生え始めてから永久歯が生え揃うまでの期間に継続的に使用していただくと、より歯質が強化されます。
フッ素は年齢によって適したものを選ぼう
フッ素は虫歯予防に効果的な成分として学術的にも広く認識されています。正しく使用していただければ虫歯予防効果が得られやすいですが、過剰に摂取してしまうと中毒症状が出てしまう可能性もあります。そのため、使用の際には年齢に応じてフッ素濃度と使用量を守っていただくことが大切です。
以下で、年齢に応じた使用方法について具体的にご説明します。
歯の生え始め~2歳(乳歯萌出期)
赤ちゃんの歯が生え始める頃は、フッ素の取り扱いに注意が必要です。
この時期は、口の中の機能が未発達であり、うがいもできないため、歯磨き粉を飲み込んでしまうことがあります。歯磨き粉を使用する際は、飲み込んでも問題のないように少なめの量で歯磨きを行ないましょう。使用する歯磨き粉のフッ素濃度は1000ppm以下のものを選び、歯ブラシに取る量は2mm以下の少量で十分です。
歯磨き粉には、研磨成分の粒子が配合されていないジェルタイプのものもあります。小さいお子さんだと歯磨き粉の舌触りに違和感を感じ嫌がってしまう子もいらっしゃいます。その場合はジェルタイプがおすすめです。ジェルタイプのものでも嫌がってしまうお子さんは、無理に歯磨き粉をつけなくても大丈夫です。この時期は歯の本数も少なく唾液の分泌が多く、虫歯のリスクも低いため、歯ブラシで磨くだけでも十分です。お子さんができそうなタイミングで、補助的に少しずつフッ素を取り入れてみましょう。
3歳~5歳(乳歯期)
3~5歳の幼児期は、子供たちの心や体が大きな変化を迎える時期です。会話もできるようになることで家族以外にも友達との関わりが増え、運動機能も上がり始める時期になります。食べる量も多くなり食生活も変化しやすく、虫歯が発生しやすくなる時期でもあるためフッ素の使用が推奨されます。
この年齢での適切なフッ素濃度は1000ppmくらいで、歯磨き粉は5mm程度の量を歯ブラシにつけて使用しましょう。使用量を守っていただくことで、適切な量のフッ素を歯に供給しつつ、飲み込みを最小限に抑えることができます。親御さんが正しい歯磨き粉の使用方法を知った上で、お子さんが飲み込んでしまわないように注意してあげましょう。
この年齢のお子さんの多くは、乳歯が奥歯までしっかりと生え揃っているため、おうちでのフッ素入り歯磨き粉の使用はもちろん、歯科医院でのフッ素塗布を始めるのにも最適な時期と言えます。
また、この時期から、少しずつ歯磨きのやり方を伝えてあげるようにしましょう。お子さんが幼稚園や保育園で、歯磨きのやり方を教わってくる機会もあると思うので、それをきっかけに教えてあげるのも良いです。お子さん本人が磨いた後には、必ず仕上げ磨きも行なうようにしましょう。
6歳~14歳(乳歯から永久歯への生え変わりの時期)
6歳から14歳は、子供の歯が乳歯から永久歯へと生え変わる時期です。この時期には、生え換わりで抜けた歯の部分に隙間ができたり、歯が生えかけの状態で半分歯茎に埋まっていたりと、非常に歯磨きがしにくい状態になっています。そのため、虫歯のリスクも高まりやすいです。
歯は、生えてすぐは未熟な状態ですが、そこから2~3年かけて少しずつ成熟してきます。その期間にフッ素を使用すれば、歯にフッ素が取り込まれやすくなることによって、歯質が強くなり、虫歯を予防しやすくなります。したがって、この時期に定期的にフッ素を使用することは、永久歯の虫歯予防に非常に効果的です。
推奨されるフッ素濃度は約1500ppmで、歯磨き粉は1.5~2cm程度の量を使用しましょう。高濃度フッ素配合の歯磨き粉を選び、毎日のブラッシング習慣を身につけていただくことで、虫歯のリスクを減らすことができます。
15歳以上(永久歯期)
15歳以上になると、永久歯がすべて生え揃うため、口腔ケアが欠かせません。
しかし、この時期は思春期でもあり、多感な時期です。家族と過ごす時間より友達との時間を大切にするようになる時期でもあります。クラブ活動や勉強、友達との外出、趣味に関わる活動などで、間食も増えやすいです。そのため、食生活や生活習慣が管理しにくくなり、虫歯のリスクが高くなる傾向があります。
この時期の1つの虫歯予防習慣として、1500ppmくらいの高濃度フッ素配合の歯磨き粉を使用していただくのがおすすめです。目で見にくい1番奥の歯まで忘れずに磨き、時間がある時にフロスを使用していただくとよいでしょう。
また、思春期はホルモンのバランスが崩れやすく、この時期特有の歯肉炎にかかりやすいです。もし、歯磨きを頑張ってやっているのに歯茎の腫れや出血が続くような場合には、歯科医院で診てもらいましょう。
※学会合同のフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法(日本口腔衛生学会HPより引用)
大人の口腔ケアにもフッ素は効果的
大人になっても、虫歯のリスクはあります。特に、年齢を重ねるにつれて歯ぐきが下がってくると、歯の根っこが露出しやすくなります。露出した歯の根っこ部分は、エナメル質よりも柔らかいセメント質と呼ばれる組織でできており、虫歯になりやすいです。
このような状況を防ぐため、大人の口腔ケアにもフッ素が効果的です。フッ素は歯の根っこ部分の歯質を強化し、虫歯を防ぐ効果があります。そのため、高濃度フッ素配合の歯磨き粉の使用や、歯科医院での定期的なフッ素塗布をおすすめしております。
まずは当院へご相談ください
フッ素の使用により虫歯のリスクを減らすことができます。しかし、歯磨きが不十分で歯垢(プラーク)が残ってしまうと、フッ素の効果を十分に得ることができず、虫歯になってしまう可能性があります。そのため、まずは正しい歯磨きのやり方を知っていただくことも大切です。
フッ素塗布には年齢制限がないため、子供から大人まで安心して使用していただけます。、ただし、お子さんへ使用する場合は、年齢に応じたフッ素濃度と量を選ぶことが大切です。適正量を守ることで、効果的に虫歯を予防しながら、飲み込みによるフッ素の過剰摂取も防ぐことができます。
フッ素の使用をお考えの方は、まずはお近くの歯科医院で相談しましょう。定期的なチェックを通して専門的なアドバイスを聞くことができます。ご自身に合ったフッ素の効果的な使用法を知っていただくことで、より効果的な虫歯予防が可能になります。
当院では、お子さんから大人の方まで幅広い年齢層へ、治療はもちろん、クリーニングや定期検診、歯科に関するカウンセリングも行っています。お口に関するお悩みのある方は、お気軽に当院へご相談ください。