過剰歯の抜歯は大人でも必要？適切な対処法を徹底解説
監修：歯科医師 安藤壮吾
『過剰歯』という言葉を聞いたことがありますか？過剰歯は、通常よりも多くの歯が生えている状態を言います。もしご自身の歯が多いことに気付いたら、どう対処すればいいのか不安に思うかもしれません。実は、多くの人が正しい対応方法を知らないのが現状です。
今回は、過剰歯の適切な対処法について詳しくお伝えしていきます。
大人になっても過剰歯がある理由
過剰歯がなぜ発生するのか、その明確な原因はまだ解明されていません。過剰歯はさまざまなタイミングで生えてきますが、多くの場合、永久歯が生えるべき場所以外に放出しているため、偶然気づくことが多いです。また、定期的な歯科検診の際に歯科医師から指摘されることもあります。
特に子供の頃は、永久歯が通常より遅れて生えることや、歯並びに影響を与えることがあるため、過剰歯の存在が発見されやすいです。
しかし、これらの症状がなく成長した場合、または特に気にならない場合には、成人しても過剰歯がそのまま残ることもあります。過剰歯があることを知らずに生活している人も少なくありません。
過剰歯が大人の口腔内の及ぼす影響とは？
１、永久歯の根を溶かす
過剰歯が、永久歯の象牙質に接触すると、象牙質が溶ける可能性があります。象牙質はエナメル質よりも柔らかいため、影響を受けやすいのです。
永久歯の根が溶けて歯が不安定になり抜け落ちるリスクが高まったり、神経が損傷を受けて死んでしまったりすることもあるのです。
２、嚢胞の形成
過剰歯が埋まったまま生えてこない場合、周囲の組織に炎症を引き起こし、嚢胞（膿の袋）を形成することがあります。嚢胞が大きくなると、永久歯の根を圧迫または溶かし、さらなるトラブルを引き起こすこともあるのです。
３、細菌感染
過剰歯が原因で歯磨きがしづらくなることがあり、虫歯のリスクが高まります。虫歯が神経まで進行すると、重度の炎症や細菌感染を引き起こし、過剰歯も含めた周囲の歯や歯茎に影響を及ぼすことがあります。
４、歯並びへの影響
過剰歯が永久歯の放出を妨げることがあります。永久歯が正常な位置に萌出できないと、歯並びが乱れ、将来的に咬み合わせの問題や顎関節症の原因となることがあります。
過剰歯への対応で知っておきたいポイント
過剰歯が確認されて治療を行う場合、基本的には抜歯が選択されます。
過剰歯を抜歯する場合
以下のことを参考に、抜歯が必要かどうかを歯科医師が判断します。
１、埋まっている位置の確認
過剰歯がどこにあるか正確に知ることが非常に重要です。特に、他の永久歯や神経に近接している場合、その位置によっては抜歯手法が異なるケースがあります。
２、向き
過剰歯がどの方向を向いているかも抜歯をするのに大きく影響します。例えば、正常な方向とは異なる角度で生えている過剰歯は、周囲の組織に損傷を与えるリスクが高くなります。
３、深さの検討
過剰歯がどれだけ深く埋まっているかによって、抜歯の難易度が変わります。深く埋まった過剰歯は、抜歯時に周囲の骨を多く取り除く必要ががあることが多いです。
４、診断ツール
レントゲン撮影だけでは不十分な場合が多いため、より詳細な画像を得るために歯科用CTを利用することが推奨されます。CTスキャンは、過剰歯の正確な位置、向き、深さを把握するのに非常に有効です。
過剰歯を抜歯せずに残す場合
過剰歯は、必ずしも抜歯が必要なわけではありません。過剰歯への対処法は、患者様の口腔内の状態やリスク要因に基づいて検討してきます。
過剰歯が深い位置に埋まっていたり、他の歯に影響を与えていなかったりする場合は、積極的な治療を行わずに経過を観察することがあります。定期的なレントゲン撮影やCTスキャンで位置や状態の変化を確認し、問題が生じた際に相談しながら対応していきます。
萌出している過剰歯を残す場合、特に歯並びから外れて生えていると、プラークが蓄積しやすく虫歯や歯周病のリスクが高まります。フロスや歯間ブラシなどを用いて、通常の歯ブラシでは届かない部分の清掃を忘れずに行うことが重要です。
もしも過剰歯を見つけたら、歯科医院で相談を
過剰歯は、単に「歯が多い」というだけでなく、さまざまな問題を引き起こす可能性があります。放置すると他の歯への悪影響を及ぼすことがあるため注意が必要です。もしも過剰歯があることに気づいたり、過剰歯があると言われたりした場合は、歯科医師の診断のもとで適切な対処をするようにしましょう。