奥歯の抜歯後に放置は厳禁!知っておくべきリスクと最新治療法
監修:歯科医師 安藤壮吾
虫歯や歯周病、親知らずのトラブルなどが原因で「奥歯を抜歯しなければならなくなった」という事態に直面することがあります。
やむを得ず抜歯をしても、奥歯は見えにくいため抜いたまま放置してしまう方も少なくありません。しかし、実はお口や全身の健康に深刻な悪影響を及ぼすリスクが潜んでいます。
このコラムでは、奥歯を抜歯した後に起こることや、適切な治療法を解説します。
奥歯を抜歯した後に起こるお口の中の変化
奥歯を抜いたまま治療をせずに長い期間が経つと、お口の中全体のバランスが徐々に崩れていってしまいます。
歯は上下左右が互いに支え合うことで正しい位置を保っているため、1本でも失われるとその連鎖反応が周囲の歯にまで及ぶのです。
厚生労働省の生活習慣病予防のための健康情報サイト(e-ヘルスネット)によると、奥歯が失われた場合、残された前方の歯にかかる負担が大きくなり、結果としてさらに多くの歯を失いやすくなる悪循環が指摘されています。
具体的にどのような変化が起こるのか、代表的な3つの現象を詳しく見ていきましょう。
隣の歯が空いたスペースに傾いてくる
歯が抜けたままになると、その両隣にある歯が空いた空間に向かって少しずつ倒れ込んできます。
本来は隣同士の歯が押し合うことでまっすぐ生えていますが、間が空いて支えがなくなることで、歯並びや咬み合わせ全体がガタガタになってしまいます。
咬み合っていた反対側の歯が伸びてくる
上の奥歯を抜いた場合は下の歯が、下の奥歯を抜いた場合は上の歯が、咬み合う相手を求めて空いたスペースに突き出るように伸びてきます(これを専門用語で「挺出(ていしゅつ)」と呼びます)。
これにより、全体の咬み合わせの高さが狂ってしまいます。
歯を支える顎の骨が徐々に痩せていく
歯が植わっていた顎の骨は、物を咬んだ時の刺激が伝わることでそのボリュームを維持しています。
抜歯して咬む刺激がなくなると、体はその部分の骨を不要と判断し、徐々に骨が溶けて細くなってしまう性質を持っています。これを「骨吸収」と言います。
奥歯がないまま放置することの3つのリスク
奥歯を抜いた後、「見えない場所だから」「1本くらい大丈夫だから」と放置することは、単に物を咬みにくくなるだけでは収まりません。
先述したようなお口の中の環境悪化から始まり、放置する期間が長くなればなるほど、お口だけでなく全身に悪影響を及ぼすリスクが高まります。
ここでは特に知っておくべき3つのリスクについて解説します。
虫歯や歯周病の発生率が跳ね上がる
歯が傾いたり伸びたりすることで、歯並びに複雑な段差や隙間が生まれます。
この部分には食べカスが非常に詰まりやすく、通常のブラッシングではプラーク(歯垢)を落としきれなくなるため、周囲の健康な歯まで虫歯や歯周病にかかる危険性が高まります。
咬み合わせが乱れ顎関節症が誘発される
奥歯を失うと、多くの人は無意識のうちに反対側の健康な奥歯ばかりで物を咬む「片側咬み」をするようになります。
左右の筋肉や関節のバランスが乱れることで、顎の関節がカクカク鳴る、口が大きく開けられない、顎が痛むといった「顎関節症」の症状を引き起こすケースも少なくありません。
将来的な認知症や認知機能低下のリスクが増大する
近年、歯科医療の世界だけでなく公的な研究でも「咬むことと脳の健康」の関連性が強く指摘されています。
奥歯がなくなって咬む力が著しく低下すると、脳への刺激が減少してしまい、将来的なアルツハイマー型認知症などの発症リスクを高める要因になることがわかっています。
奥歯の抜歯後に行われる主な3つの治療法
奥歯を抜歯した後は、できるだけ早い段階で「失った部分を補う治療(補綴治療)」を行う必要があります。
顎の骨や周囲の歯が動き出してしまう前に手を打つことで、お口の健康を長く保つことができます。
| 治療法 | 特徴 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| インプラント | 顎の骨に人工歯根を埋め込む |
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| ブリッジ | 両隣の歯を削って橋渡し型の被せ物をする |
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両隣の健康な歯を大きく削る必要があり、負担がかかる |
| 入れ歯(義歯) | 取り外し式の人工の歯を装着する |
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現在、歯科医院で広く行われている治療法には主に3つの選択肢があります。それぞれの治療法に異なる特徴やメリット・デメリットがあるため、自身のライフスタイルや予算に合わせて選ぶことが大切です。
<治療開始のタイミングについて>
抜歯した部分の傷口や顎の骨が安定するまでには数か月かかりますが、放置しすぎると周囲の歯が動き出してしまいます。
抜歯を行う前から、その後の治療計画について歯科医師としっかりと相談しておくことが必要です。
自然な咬み心地を追求する「インプラント治療」
インプラントは、歯を失った部分の顎の骨にチタン製のネジ(人工歯根)を埋め込み、その上に人工の歯を被せる独立した治療法です。
他の歯に一切負担をかけない点が最大のメリットですが、外科手術が必要であり、健康保険が適用されないため費用が高額になります。
しっかり固定できる「ブリッジ治療」
ブリッジは、失った歯の両隣にある健康な歯を削って土台とし、一体型の人工歯をセメントで固定する治療法です。
入れ歯のように取り外す必要がなく、しっかりと固定されますが、土台となる両隣の歯を大きく削らなければならず、その歯の寿命を縮めてしまうリスクがあります。
体への負担が少なく適応範囲が広い「入れ歯治療」
入れ歯は、部分的なプラスチックや金属の土台に人工歯をつけ、残っている歯に金属のバネ(クラスプ)をかけて固定する取り外し式の治療法です。
手術のリスクがなく、健康状態を選ばずに比較的短期間で作製できますが、食べ物が挟まりやすかったり、咬む力が元の歯より衰えたりする面もあります。
奥歯の抜歯後は速やかに歯科医師へ相談を
奥歯は見えにくい場所にあるため、抜いた後も「普段の生活でそこまで困っていないから」とつい後回しにしてしまいがちです。
しかし、放置されたお口の中では確実に歯の移動や顎の骨の減少が進行しており、時間が経つほど将来的な治療の選択肢が狭まり、費用もかさんでしまいます。
奥歯は食事を美味しく食べ、全身の健康を維持するための中心となる重要な存在です。
抜歯を勧められた際、あるいはすでに抜いたままになっている場合は、自己判断で放置せず、信頼できる歯科医師に相談して自分に合った適切な治療法を見つけましょう。
当院では、無料カウンセリングを受け付けております。セカンドオピニオンも可能なので、お気軽にご相談ください。