歯磨きで改善しない口臭の原因とは?ニオイの種類と原因物質について
監修:歯科医師 安藤壮吾
会話中、ふと自分の口臭が気になったことはありませんか?実は、私たちが自分自身の口臭に気付くことは少なく、他人から指摘されることもほとんどありません。自分の口臭に気づかず会話をしたために、その最中に気まずい空気が流れるのは、誰であっても避けたいものです。もし口臭の原因を特定し、それを改善する方法があるとしたら、知りたくありませんか?今回は、口臭の意外な原因についてお伝えします。
口臭の原因のほとんどは口の中に潜んでいる
口臭の原因の9割以上がお口の中にあるとされ、残りの1割が病気と関係していると言われています。
口臭を発する主な原因物質は、VSC(揮発性硫黄化合物)と呼ばれるガスです。VSCは、口の中に存在する細菌が、口の中の粘膜から剥がれた上皮や白血球などのタンパク質を元に作り出す臭い物質です。
このガスの種類として、「硫化水素」「メチルメルカプタン」、「ジメチルサルファイド」があります。これらの物質は種類によって異なる匂いを放ちます。
たとえば、
- 「硫化水素」:腐った卵のような臭い
- 「メチルメルカプタン」:腐った玉ねぎのような臭い
- 「ジメチルサルファイド」:生ゴミのような臭い
などがあります。これらのガスが組み合わさることで、私たちが不快に感じる口臭が発生するのです。
口臭の原因は大きく分けて3つです
口臭の原因は様々ですが、大きく3つの種類に分けられます。
生理的口臭
起床時や空腹時、また緊張するといった状況では唾液の分泌が少なくなることがあります。
唾液の働きとして、循環による口腔内の清掃作用や、細菌の増殖を抑えるなどが挙げられます。しかし、唾液の量が減少するとお口の中の汚れが停滞して細菌が増殖しやすくなり、その結果、口臭が強くなることがあります。
ホルモンバランスの変化やストレスも、口臭の感じ方に影響を与えるとして知られています。
このような口臭の原因に対しては、水分をこまめに摂取することで唾液の分泌を促し、お口の乾燥を防ぐことが有効です。
唾液の量が増えれば、細菌の増殖が抑えられ、揮発性硫黄化合物(VSC)の発生を減らすことができるため、口臭予防に繋がります。また、毎日の歯磨きは、プラークの除去や口腔内の清潔を保つことに直結し、口臭の改善に効果的です。
飲食物・趣向品による口臭
食事の内容も口臭に関わります。特に、ニンニク、ニラ、ネギといった香りが強い食材は、消化後の成分が血液を通じて肺に運ばれ、息を通して外に排出される際に特有の臭いを発します。同様に、アルコールや喫煙も口臭を引き起こす要因となります。
しかし、これらの食べ物や習慣による口臭は、その成分が体から完全に排出されれば自然と改善されます。水分の摂取を増やしたり、歯を磨いたり、息用の清涼製品(ブレスケアなど)などを使用することで、口臭の軽減を早めることも可能です。
病気・体調による口臭
口臭の原因には、「生理的口臭」や「飲食物・趣向品による口臭」に加えて「病的口臭」があります。
病的口臭は、「口腔内の病気」と「口腔外の病気」の2つに分けられます。
<口腔内の病気>
・虫歯
・歯周病
・ドライマウス
この場合は、お口の中のプラークなどを取り除くと、口臭が改善しやすくなります。歯周病が進行していると歯周病菌が増殖しやすく、口臭が特に発生しやすいため、歯科医院で専門的な機械を使用してプラークや歯石を除去する歯周病治療が必要になります。
口臭予防のためにも定期的に歯科医院でお口の状態を確認してもらうことをお勧めします。
<口腔外の病気>
・糖尿病
・消化器系、肝臓の病気
病気による口臭は、口腔衛生を良好に保っていても改善が見られない場合が多いです。なぜなら、根本的な原因が全身疾患にあるからです。
お口の衛生改善だけでなく、早期の医療機関への受診をお勧めします。
原因に応じた適切なケアを
口臭は主にお口の中の細菌の繁殖が原因です。これらの細菌は、磨き残しやお口の乾燥・疾患が原因で増殖し、不快な臭いを発することがあります。乾燥が原因の場合は定期的な歯磨きや水分補給によって改善されますが、全身的な病気が原因の場合はそうはいきません。ご自身で口臭の原因を特定するのは難しいため、適切なケアを行うためにも、まずは歯科医院での診断をお勧めいたします。口臭に関する悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。