奥歯の部分入れ歯を徹底解説!種類や費用など、後悔しない選び方
監修:歯科医師 安藤壮吾
奥歯は、物を咬む際の要となる重要な歯です。1本失うだけでも咬む力が約40%低下すると言われています。
奥歯を失ったまま放置すると、咬み合わせのズレや顎関節症、全身の不調に繋がることもあるため、早めの治療が大切です。
しかし、治療方法を決められないまま時間が経ってしまう、なんてケースも少なくありません。
歯を失った部分に人工歯を入れる方法のひとつに、「部分入れ歯」があります。
この記事では、奥歯の部分入れ歯について、種類や費用、メリットデメリットを専門家の視点でわかりやすく解説します。
あなたにとって「後悔しない治療選び」の参考になれば幸いです。
奥歯を失ったまま放置するリスク
奥歯の欠損を放置すると、口の中だけでなく全身に悪影響を及ぼします。
- 歯列の乱れ:空いたスペースに隣の歯が傾いたり、咬み合う歯が伸びてきたりして、咬合バランスが崩れる
- 咬む力の低下:食べ物をよく咬めず、胃や腸に負担がかかる
- 身体の歪みや顎関節症:歯がある片側でばかり咬むようになり、首・肩のコリ、頭痛を引き起こすことがある
虫歯や歯周病、怪我など、歯を失う原因は様々で、どの年齢の方にも起こりえます。
その中でも、若い方は特に「入れ歯」という治療方法に抵抗を感じられることが多い傾向があり、治療に踏み切れずにいる方もいらっしゃいます。
しかし、上記のように、奥歯の欠損は放置すればするほど大きな問題に繋がり、治療も難しくなるため、早期の対応が大切です。
奥歯の部分入れ歯の種類と特徴
奥歯の治療で取り扱う部分入れ歯は、主に「保険診療」と「自費診療(自由診療)」の2つに分けられます。
それぞれの特徴と違いを理解しておきましょう。
保険診療の部分入れ歯(レジン床義歯)
歯茎と接する部分がレジン樹脂(プラスチック)製で、隣接している歯に金属のバネ(クラスプ)をかけて固定します。
保険が適用されるため安価ではありますが、色々な制限によるデメリットが大きいです。
<メリット>
・費用が安く、短期間で作製可能
・修理や調整がしやすい
<デメリット>
・厚みがあり違和感を覚えやすい
・バネの色が目立ち審美性に欠ける
・吸水性があるため、変色や臭い移りが起きやすい
・寿命は3〜5年程度が一般的
自由診療の部分入れ歯
見た目や装着感、耐久性を追求したタイプの入れ歯で、素材や設計の自由度が高いのが特徴です。
■金属床義歯
<メリット>
・強度が高く、薄く作れるため違和感が少ない
・熱伝導性があり、食事の温度を感じやすい
<デメリット>
・修理が難しい
・費用がかかる
■ノンクラスプデンチャー
<メリット>
・バネがなく、歯茎に近い自然な色を再現できる(審美性が高い)
<デメリット>
・強度が低い
・経年劣化しやすい
■シリコーン義歯
<メリット>
・弾力性があり、歯茎に優しい
・フィット感が良い
<デメリット>
・シリコン部分の交換が必要な場合がある
■コーヌスクローネ義歯
<メリット>
・内冠と外冠で固定する高精度な設計で、ずれにくく安定している
<デメリット>
・土台になる歯を大きく削る必要があり、費用が高くなる
■マグネットデンチャー
<メリット>
・磁石で安定させるため、着脱が簡単でずれにくい
<デメリット>
・歯根に磁石を付けるため、歯根が残っていない部分には適用できない
部分入れ歯の費用目安
<保険診療>
自己負担3割の場合、5,000〜14,000円程度が目安です。
費用を抑えて早く治療したい方に適しています。
<自費診療>
使用する素材や設計によって各歯科医院で異なりますが、おおよそ15万円以上から、金属床義歯になると30万円以上からが一般的です。
保険診療と比較すると高額ではありますが、装着感や見た目の自然さ、耐久性を重視する方には選ばれています。
奥歯を部分入れ歯にするメリットとデメリット
奥歯を部分入れ歯で補う場合、他の治療法(ブリッジ、インプラントなど)と比較して、いくつかのメリットとデメリットがあります。
奥歯には特に咬む力がかかるので、歯科医師とよく相談し、特徴を把握した上で治療法を選ぶことが大切です。
<メリット>
- 費用負担が軽い(特に保険診療)
- 外科手術を行う必要がないため、身体への負担が少ない
- 取り外して清掃可能で衛生管理がしやすい
- 他の歯を削らずに治療できる
- 破損時の修理が比較的容易
<デメリット>
- 違和感がなくなるまで時間がかかる
- もともとのご自身の歯に比べて咬む力が弱くなることがある
- 支えとなる歯に負担がかかる
- 金属製のバネが目立つ場合がある
- 毎日の取り外しや清掃など、自己管理が必要
他の治療法との比較:ブリッジやインプラントとの違い
歯を失った部分を補う方法として、部分入れ歯の他にも、ブリッジとインプラントがあります。
■ブリッジ
<特徴>
両隣の歯を削って支えとし、橋渡しするような形の人工歯を作製する治療方法
<メリット>
・見た目が自然
・短期間で治療可能
<デメリット>
・支えになる両隣の健康な歯を削る必要がある
・素材によっては保険が適用されない
■インプラント
<特徴>
顎の骨に人工歯根を埋め込み、土台を立てて被せ物を作製する治療方法
<メリット>
・天然歯に近い咬み心地を再現できる
・長寿命
<デメリット>
・外科手術が必要
・保険適用外のため費用が高額
「費用を抑えたい」「手術は避けたい」という方には、部分入れ歯やブリッジが向いています。
入れ歯とブリッジの大きな違いは、
・隣接している歯を削るかどうか
・取り外しできるかどうか
にあります。お口の中の状態によってどちらが適しているかが異なるため、歯科医師とよく相談しましょう。
長期的な安定性や咬み心地の良さ、天然歯と変わらない自然さを求める場合は、インプラントをお勧めいたします。外科手術が必要というデメリットはありますが、歯を失った部分のみの処置で済むため、他の歯へ影響を及ぼすことなく咬む力を取り戻せます。
審美性も優れていて、周りの人に「人工歯であること」が伝わりにくい点もメリットと言えるでしょう。
歯を失った際には、自分に合った治療法の選択を
奥歯を失った際には、部分入れ歯やブリッジ、インプラントなどで治療を行なっていくことになります。
「できるだけ自然に咬みたい」
「見た目も大切にしたい」
「できれば費用を抑えたい」
あなたがどんな価値観を大切にするかで、最適な治療法は変わります。
そして、何より大切なのは放置しないことです。早めに治療を行うことが、将来的に歯の健康を守ることに繋がります。
当院では、無料カウンセリングを受け付けております。歯を失ってお悩みの方は、お気軽にご相談ください。あなたの希望に叶う治療方法を一緒に見つけましょう。